テラスカフェから雄大な眺望、大山崎山荘美術館で東山魁夷を楽しむ~京女のひとり旅6
秋晴れの京都・大山崎町。四条烏丸から小豆色がカワユイ阪急電車に乗って、「アサヒビール大山崎山荘美術館」で開催中の大好きな画家・東山魁夷の展示にお出かけ。仕事では何度も訪れたことのある大山崎町ですが、美術館は初めてなのでワクワク。阪急の大山崎駅と近くにあるJRの山崎駅、どちらからも徒歩約10分強のアクセスとはいえ、結構、急な登り坂なため、無料バスが出ています。がしかし今日は絶好の秋日和、歩きました。
JRの線路を横切って坂道をハァハァ。少し登っていくと木々が揺れる山の中。案内板に沿って左に折れると、情緒たっぷりの庭園入り口トンネル「琅玕洞(ろうかんどう)」。国の有形文化財です。
ここは京都府と大阪府の境にある、歴史に名高い天王山の中腹に建てられた、京都府登録博物館「大山崎山荘」。大正から昭和初期に、実業家・加賀正太郎が別荘として自ら設計した英国風の山荘です。平成に入って取り壊しの危機に手を差し伸べたのがアサヒビール株式会社。1996年春に美術館としてオープンされたようです。ちなみに天王山登山コースの一部です。
トンネルをくぐり、庭園を眺めつつ進みます。茶室、茶屋、物見塔、レストハウス、そして本館、これらの建物も国の有形文化財。まだ少し日差しが強いなか、木陰にはたくさんのスケッチを楽しむ人たち。絵心をくすぐる景観です。
本館到着。英国のチューダ・ゴシック様式です。
開催されているのは、デンマーク・ドイツ・オーストリア・欧州の古い町並みを描いた、習作を中心とした「東山魁夷のスケッチ展」。レトロな山荘の美術館と相性ぴったり。私は、東山魁夷のさわやかな色使いがとても好きで、香川県立東山魁夷せとうち美術館へは年数回訪れて、瀬戸大橋・瀬戸内の景観とともに楽しむファン。そして今回の展示は、長野県信濃美術館・東山魁夷館のもので、ここはずーっとリニューアル中だったのですが、先ごろオープンし、行きたくて行きたくてうずうずしています。ところで、数点の本制作には、ドイツ「丘の上のローテンブルク」の展示も。府庁時代に研修で訪れたことがあるローテンブルク、緑に囲まれた赤い屋根、センス良く統一された商店の看板などのまちづくりを少し勉強させてもらったこともあり、懐かしい。
そして、お待ちかねの2階のカフェへ。テラスから桂川、宇治川、木津川、三川が合流する大山崎界隈を一望。雄大な眺めに見とれます。
天王山からの眺めはバツグン。こんなところに住んでたら、他地域への旅を楽しむ、なんてことはなかったかも。。それはそれで、ちょっと悲しい。
実は、数年前に仕事で、すぐこの近く、同じく天王山の麓に建つ国の重要文化財「聴竹居(ちょうちくきょ)」を役場の方に案内いただいたことがあります。建築家・藤井厚二が理想を具現化した自邸。日本の気候風土と感性に適合する理想の住まい。環境建築として、近年さらに注目をあびています。癒される建物、癒される風景、癒される場所。案内してくださった方は聴竹居保存スタッフメンバーでもあったのですが、文化財の保存や継承はとても大変、地元の人たちの力あってこそなんやなぁと痛感。それ以来、西へ行く新幹線に乗るたびに車内から天王山を眺めています。楽しみがまたひとつ追加されてうれしい。
レトロなカフェ、特製のオリジナルスイーツでほっこり。
下山してから、駅近くのダイニングでランチ。
大山崎は阪急とJRの駅が近いので、その導線を中心にランチ処が結構充実しています。外で人が待っているお店もあるようで、とても気になります。ところで、秋日和のもと、雄大な眺めに感動しすぎて、美術館のもうひとつのチェックポイント、安藤忠雄設計の地中館・地中の宝石箱に展示されていた美術館所蔵の「クロード・モネの睡蓮」を見忘れてしまいました。やれやれ・・です。まあ、後期には作品入れ替えもあることですし、また訪れることにしましょう。次はきっと、紅葉が広がる景色、に違いない。