静岡県熱海・MOA美術館で「光琳の梅」を見る~京女のひとり旅21
梅のお花見、最後は国宝「紅白梅図屏風」。江戸中期の絵師・尾形光琳(おがたこうりん)の最高傑作。京都の梅さんぽで訪れた世界文化遺産・下鴨神社の「光琳の梅」。その梅をモデルに光琳が描いた屏風が国宝の・・と先のブログでさらっと紹介しっぱなしやったし、完結しとこ、と、静岡県熱海市のMOA(エムオーエー)美術館へ。最終日間近の所蔵国宝屏風の限定公開へ滑り込みました。カメラOK!・・すばらしい、さすが宗教系、太っ腹。
公務員時代から現地現場主義・・・なーんちゃって・・現物を見んとどーも落ち着かんもんで。言うてもこれが「光琳の梅」かどうかなんて全然わからへんかったけど。まぁ、光琳はんが京都にいてはって、糺(ただす)の森の奥にある静かな下鴨神社で写生しはった紅梅を右双に、左双の白梅との二曲一双の屏風が、ことのほか上出来で国宝になった、と、そんなところでしょうか。間違ってたらスンまへん。美術館の説明文にも下鴨神社の梅がどうのこうのなんて書いてへんし、来場者は誰もそんなこと気にも留めず、さっと通り過ぎる人も。ともあれわたし的には、紅梅と白梅のそれぞれの枝ぶり、樹のたらし込み技法、そして特に中央のダイナミックな水流・水紋の構図がお気に入りの逸品。宝の持ち腐れにならんよーに・・などと京女の上から目線になってしまって、大きなお世話やね。
これも国宝。江戸時代の野々村仁清(ののむらにんせい)作、「色絵藤花文茶壷」。仁清は京都府南丹市美山の大野区が生誕の地。仁和寺の門前に御室窯(おむろがま)を開いて、京焼の色絵陶器を完成させたと言われています。姿のえぇ壺です。
MOA美術館には、国宝3、重要文化財67、重要美術品46を含む約3500件が所蔵されてるとか。さすが・・・。
3点目の国宝。「手鑑『翰墨城』」(てかがみ かんぼくじょう)。奈良から室町時代。手鑑は、代表的な古人の書・筆跡を集めて帖にした作品集ですって。全国の三大手鑑のひとつで、あとは京都国立博物館、出光美術館に所蔵されてるらし。この展示は平安時代の菅原道真のものと書いてある。
重文の「平兼盛像(たいらのかねもりぞう)佐竹本三十六歌仙切(さたけぼんさんじゅうろっかせんぎれ)」。鎌倉時代。佐竹本は秋田藩主佐竹家に伝来したもの。悲しいけど、古い文書は読めへんので「書」は苦手。けど、やっぱ、そろそろ解読してみたい。ツレアイが生前に古文書(こもんじょ)のカルチャー講座に通ってて、高齢者が多いしと少々ナメてたら予習復習してもなかなかついていけへん講座で、さらっと読み解く高齢女子らに啞然。「おばあちゃんたちはスゴイっ」と言うてたことが。私には到底無理やろか。もっとおばあちゃんになったら解読できるかも・・そういうもんやないか。確かに、リタイアして時間に余裕ができると知識欲がどんどん増してくるようやわ。。
重文。「山水人物蒔絵手箱」。鎌倉時代のものらしい。蒔絵(まきえ)でふたや側面に描かれた急流や筏や人々が生き生きとみえる。
これも重文。私の大好きな鍋島の大皿。「色絵桃花文皿」。桃の実のプルンとした感がかわいい。この大胆な構図もステキ。
とまあ、見どころたっぷりで終了。ちょっと疲れたなぁ、と思ったらティーカフェめっけ。有機JASコーヒー380円。飲み物だけやったけど、うれしっ。入り口に高級そうなレストランや茶室の案内があって、1000円越えのケーキセットくらいは仕方ないかなぁ、と思ってただけに。ちなみに京都市京セラ美術館のコーヒーだって600円もするのに・・って関係ないか。とても眺めのいいカフェ。雨で視界が悪いけど、眼下には相模灘や熱海城がうっすらと見えてる。
熱海へは、京都から片道2時間の新幹線ひかり往復で日帰り。乗り換えなしだと11時過ぎに到着してから16時半頃まで帰られへん。滞在約5時間。しかもこの日は熱海~東京界隈だけ雨予報。雨の熱海ウェークやねと覚悟して、長い傘にトレッキングシューズのいで立ち。熱海は丘陵が多くMOA美術館は山の上。
熱海駅に降り立って、観光案内所のおねぇさんに美術館までの歩き方を聞くと、「バスがありますよ」「いや、歩きたいので」「えっ、歩く?!30分ほどかかりますよ。チケット買いましたか?」「はい、オンラインチケットを」。「あら惜しい、セットならバスが無料になるのに」・・・いやいや、貧乏なんやないし。時間たっぷりやから、とにかくまちを歩きたいんやけどなぁ。「あっちに見える東横インで道が二手に分かれて美術館こっちって看板がありますから、あとは道ぞいにずーっと」と、だんだん投げやりな案内。歩いたことなんてないに違いない。そうゆう観光案内人多いけど、仕事なら一度は歩いてみなはれ・・ですわ。しょうがないのでGマップで傘をさしてスタート。急勾配の坂道と石段。看板は車の道、マップはときどき行き止まりの石段、ってどないやねん。
美術館に到着する頃にはヘロヘロの汗だく。隣の世界救世教に救ってもらいたい気分。美術館エントランスに入館したら「本館の入り口は山の上ですから」えぇ~~~と思ったら「エレベーター7つ登ってくださいね」と。もう、これ以上歩かれへんし。。上下運動は苦手やわ。
エレベーター途中にあった円形ホールの天井。万華鏡が投影されてるらしい。床は世界6か国から集めた大理石とか。。。何も言うことはありません。美術館からの帰りも徒歩。道を覚えたのでスイスイ。トレッキングシューズで濡れた石段も滑ることなく快適。
JR熱海駅前の商店街。雨の平日、人は少ない目やけど、卒業旅行やろか学生らしきやつらが、熱海プリンとかスイーツ系の店にちょこちょこ行列。並ぶん好きやねぇ。コロナやで。。。熱海はずいぶん前にツレアイと熱海梅園の梅まつりに来たことがあーりので2度目。海岸の方まで商店街やお店があったはず、とランチ処を探してウォーク継続。
商店街を抜けると湯気が噴きだす道路。そうや、熱海は温泉やったんやと遅ればせながら気づきました。東京圏域の人らには観光保養地なんやねえ、ひものや海の幸がよーさん並んでます。そういえば、沼津のアジのひものを郵便局のふるさと産品で注文したことが何度かあったよーな。とは言え、熱海で買うこともないか、と。旅先でおいしいもんって、最近はあんまり思わへん。東日本の和食系は特にゴメンなさいやし、コロナ以降は店内環境も気になるしー。
ランチは海岸近くの商店街。宝亭のハンバーグカレー。午後2時半も過ぎててゆったり空間でいただきました。カレーなら味も安心かと。
熱海を有名にした尾崎紅葉の小説・金色夜叉(こんじきやしゃ)の名場面「寛一お宮の像」。昭和でもなく明治30年頃の小説なんやけど、どんな理由にせよ女子を足蹴にするってどうよ、男がどんくさいだけちゃぁうん、と、なんだか腹立たしくなったので早々に終了。急な石段や坂道を登って駅へ。さすがに疲れ切って1時間ほど新幹線待合で読書タイム。天気予報通りほんまにずーっと雨で、富士山は行きも帰りも見えず残念で愛想なし。静岡を出たあたりからは良い天気。夕闇が迫るなかでも伊吹山はくっきり姿をみせてくれて旅終了。次は桜前線。楽しみでーす。