2023.08.25

京都市京セラ美術館「ルーヴル美術館展」~愛を描く

ルーヴルには愛がある。ラテン語「LOUVRE」には、英語の「LOVE」が隠れてる!ってなわけで、膨大なルーヴル美のコレクションから、愛をテーマに描かれた古典絵画の企画展へお出かけ。酷暑の京都で気分はパリ。一部カメラOKを中心にご紹介。

《アモルとプシュケ》又は《アモルの最初のキスを受けるプシュケ》フランソワ・ジェラール、1798年。メインビジュアルにもなってるやつ。愛の神アモルと人間の娘プシュケ。古代ローマの小説の一場面やて。プシュケの虚ろなまなざしは、初めて愛を受け入れた瞬間。大切なものを扱うよーにそっと手をまわすアモル。無垢な若者が愛を育む・・が当時流行したらし。プシュケは、魂や心。人間の魂が神様の愛に触れていろいろな試練を経て幸せを知る物語。精神・プシュケと肉体・アモルの融合。小さくて見えにくいけど、プシュケの上に飛んでる蝶々は人の魂をあらわす。作者はナポレオンに気に入られて男爵の地位を授かった画家・・などとTV・ぶらぶら美術館で学芸員が説明してはった。解説聞かんとさっぱりわからへん。いかにもな「愛」やけど、拉致やレイプがあたりまえのギリシア・ローマ神話の中で、これはめずらしハッピーエンド。カメラOKやったんは、このサービスショットと最後の展示ブース・・牧歌的恋愛や悲劇がテーマの数枚のみ。

《エンデュミオンの眠り》アンヌ=ルイ・ジロデ・ド・ルシー=トリオゾン、1791年・・の準備スケッチやて。羊飼いの美青年エンデュミオンに恋した月の神セレネは、全能の神ゼウスに頼んで彼を永遠の眠りにつかせ、毎夜、その官能的な寝姿を見に来たと。神さん、ワガママ。。

《アポロンとキュパリッソス》クロード=マリー・デュビュッフ1821年。かわいがってた牡鹿をうっかり投げ槍で殺してしまった美少年キュパリッソスは、生きる気力を失い、永遠に嘆き続けたいと神々に哀願し、糸杉に変身する・・って、ヤワなヤツ。場面は牡鹿にもたれるよーに横たわるキュパリッソスの頭を、太陽の神アポロンが優しく支えてる。アポロンに愛されたキュパリッソス。悲劇、破滅的な愛の神話。

《ロミオとジュリエット》テオドール・シャセリオー、1850年頃。言わずと知れた、死に至る愛。

《ダンテとウェルギリウスの前に現れたフランチェスカ・ダ・リミニとパオロ・マラテスタの亡霊》アリ・シェフェール、1855年。イタリアの詩人ダンテの『神曲』地獄篇で有名になった、パオロとフランチェスカ、実在の人物の悲恋物語。政略結婚で嫁いだフランチェスカは、義理の弟パオロと恋に落ち、嫉妬する夫に刺し殺された二人は、亡霊となって風に吹かれながら永遠に地獄をさまようという話。剣の傷跡も生々しく、かつドラマチックに大胆な構図。画面の右には、古代ローマの詩人ヴェルギリウスの案内で地獄を巡る鷲鼻のダンテも登場。地獄に落ちてなお、愛の焔が燃えさかるロマン主義。とはいえ、最後のカメラOKがこんな悲恋ばっかやと、後味が重苦しいので、ポストカード写真で、ちょい追加。

《アモルの標的》フランソワ・ブーシェ、1758年。全73作品のトップで展示。愛の誕生の瞬間。羽がカワユイ、アモル=キューピット=愛の神様。標的のハートに矢が刺さって愛が誕生。標的には外れた矢の穴もたくさんあって、ハズレの矢は下で燃やしてる。アモルがかかげる月桂冠は道徳的に正しい高潔な愛。つがいのハト・・つがいになると生涯パートナーを変えへんのやて。フランソワ・ブーシェはルイ15世の主席画家。成長したアモルが人間の娘プシュケと結ばれる場面が、一番最初に紹介したやつ。その過程での、アモルの母親・ヴィーナスとトラブル場面作品もいろいろ。もう1枚、イチオシされてた作品が・・

《かんぬき》ジャン=オノレ・フラゴナール、1777ー1778年頃。隠されたメッセージあり。曖昧さがフラゴナールの真骨頂とか。かんぬきに手を伸ばした女性の表情は、困惑?それとも陶酔?・・嫌よ嫌よも好きのうち状態?なんて解説もあったり。かんぬきは男性器のメタファー(暗喩)。暗い絵しかもカード写真では見えへんけど、倒れた壺&バラの花束は女性器のメタファー。乱れたベッド。枕は女性のちぶさ。足をひらいたよーにも見える。テーブルにはリンゴ。リンゴとえばアダムとエバの原罪・・ともあれ、フラゴナール渾身の官能作とTVで学芸員さん解説。メタファーはよーわからんけど、ものスゴ気になる絵、ではあった。「愛を描く」・・男女、神々、人々、情熱、欲望、官能的な喜び、苦悩、嫉妬、宗教画の無償の愛、聖家族、キリストの磔刑、聖人の殉教などなど愛にもいろいろ。愛って結構ドロドロなんやなぁ、勉強になりました。