2021.08.23

「上村松園」結集!さすが京都~京都市京セラ美術館開館1周年記念展

京都は4回目のコロナ緊急宣言中。7月中旬からスタートした、京都市京セラ美術館開館1周年記念展「上村松園(うえむらしょうえん)」。後期展示が始まったばかりなのに休業?と、心配して駆け込んだけど、企画展は継続開催してくれてはるみたい。また行こっと!

去年のリニューアルオープン以降、コロナで展示が中止や延期や変更になりつつも、京セラ美は京都市民の静かな癒しスポットやし、興味ある企画展や四季のコレクション展には、ほぼもれなくお出かけしている私。撮影OKだった松園コレクションを、ブログで紹介したことも。(京セラ美の松園コレクションブログ

トップの写真は、先週、後期から展示開始された「長夜(ながよ)」。松園32歳頃の作品で岡倉天心がお買い上げされてたものとか。京セラ美では撮影禁止やけど、これは、京都嵐山の福田美術館所蔵で、この6月の福田美の企画展「美人のすべてリターンズ」で初見して撮影したもの。「長夜」は2019年10月の福田美開館記念展で公開されてたのを見逃がして、今回も危うく福田美コロナ休館で2連敗か、とあきらめかけたものの期間延長してくれはったので、ほぼ2年越しでようやく出会えたもの。福田美の松園コレクションは撮影OKにつき、パチリ。うれし。で、さらに、福田美では・・

「和楽之図」とか・・

「浴後美人図」。ヌードというより日常のお風呂上がり女子を描いたもの、とか・・

「美人観月」。この構図は、左下に飛ぶ小さなホタルを見つめるバージョンを他の美術館で観かけたり、とか・・

去年の初公開でちょっと話題になった「雪女」。怨念が感じられるおどろおどろしいやつ、なども鑑賞済み。(福田美のブログ)。さらに、各地にお出かけして観た松園は数知れず・・

・・・ざっと、こんな感じ・・って、ちょっとひいたんちゃぁう?。だからさぁ、女子ひとり旅に美術館はええんやって。公立が多くアクセス安心、駐車場、きれいなトイレ、オシャレなカフェ完備で、ひとり女子旅のくつろぎスポット。京セラ美のように最近のリニューアル美術館は、展示内容より建物のが話題をさらってる、てなもんで。上のチラシの文字までは見えんかも知れんけど、東京の山種美、長野の水野美、名古屋の名都美、古川美、広島のウッドワン美・・などなど。宍道湖のほとりの島根県立美で水野美コレクション展の松園に出会う、とか、ワクワクと安心が一緒に味わえます。今回のチラシに掲載の、重要文化財「序の舞(じょのまい)」も・・

所蔵する東京藝術大学大学美術館や、奈良の松伯(しょうはく)美術館でも堪能。世間にも男にも媚びない凛とした姿に、京都でもまた出会えるかと思うと、心ウキウキ。さて、入場。

ちょっと感激です!。こんなにあちこちで松園作品観てるのに、今回、半分以上は、初見の作品。記憶力が良い方でなくて、有名作品以外あまり覚えてへんだけかも知れんけど、それにしても、松園解説本や作品集に掲載してあってもまだ肉筆画を観たことなかった作品がいろいろ展示。びっくり。さすが、京都市美術館!。開館1周年記念と言うだけあって、京都市出身、女子で初めて文化勲章受章の上村松園の作品、これだけよー集めはったなぁ、まさに結集!、と、ものスゴ感動しました。

松園の描く女子たちは、何かしら・・かわいい。若い娘にははやりの髷(まげ)。人妻、若妻には丸髷(まるまげ)。そして、髪飾りは、舞妓さんや花魁(おいらん)じゃあるまいし、ってくらいのかんざしや何本もの笄(こうがい)やらがさしてあるのに、重苦しくなくポップな感じ。地味目の着物にも、どこかしらにワクワク感のある襦袢や小物の色づかい。ファッション雑誌的な女子目線。ぞーっとする怨念も、女子ならでは・・なのかも。それと、特徴的なのが、御簾(みす)と言うのか、座敷簾(ざしきすだれ)と言うのかが描かれた作品群。集中力が半端ないんやろな、と思わせるほどに、ち密に描かれていて、つい、見入ってしまうほど。もちろん、図録買いました。

図録の表紙になってるのは、大阪市立美術館所蔵の「晩秋」。右側のは、一昨年、松伯美術館の下絵展で入手してたポストカードで、今回よーやく出会えてうれしい。晩秋に障子を繕う女子。貼り付け用に切り抜かれた紙も、雪の結晶や紅葉チックなカタチがかわいくて。

松園43歳頃の「焔(ほのお)」。東京国立博物館所蔵で、肉筆画に出会ったのは初めて。源氏物語、光源氏の愛人・六条御息所が、正妻の葵上に嫉妬して生霊となった姿。怨念を込めて乱れた髪を口でかみ、着物には清楚な藤の花に絡む大きな蜘蛛の巣で、女性の情念を描いた作品。家に展示したら呪われそうで、ポストカードよー買わんかったです。

右側が重要文化財「母子」。東京国立近代美術館蔵。59歳頃の作品。いつ出会ってもやさしい気持ちになれる絵。前年に生まれた孫(上村淳之⦅うえむらあつし⦆・日本画家)モデルの母子像やけど、同年に亡くなった松園の母の思い出を描いた作品だと。左側は「夕暮」。66歳頃の作品。日が暮れて暗くなった室内から外の明るさを求めて縁側へにじり寄り、針に糸を通そうとする女子。地味な色合いの着物で、庶民の生活に主題を取った作品。針山と紐の赤が華やか。この作品は、松園の孫娘が在学した京都府立第一高等女学校(現府立鴨沂⦅おうき⦆高校・・京都御所のすぐ横にある高校)に寄贈されたもので、解説本でもよく紹介されて近くにあってもなかなか出会えず、今回初めて対面できてうれしい。けど、展示期間がとても短くて・・もう一回駆け込もうかと思案中。

ところで、松園作品、今、京都に集まってるやつから、どれか好きなんあげるって言わはったら・・誰も言わはらへんけど・・ともかく、わたし的なナンバー1は、この1周年記念の松園展でなくて、入り口別の京セラ美所蔵作品のコレクションルーム・夏期で同時展示されてる「待月(たいげつ)」(下の写真の上)。完全後ろ姿で、真ん中にどーんと柱が描かれてるやつ。ナンバー2も、同じくコレクションルーム展示の、働く女子を描いた「晴日(せいじつ)」(下の写真の下)・・・かな。

重要文化財ではないけど、東京にお嫁に行った作品群よりも、気負わず京都にしっかり根付いて味のある作品が、ちょっと愛おしい。京都人のひいき目かも。コレクションルームの松園作品はカメラOK。去年もブログ掲載したけど、また、今年も撮影しちゃいました。どっちの展示も観てもらえるよーに、上手に振り分けてはるねぇ。ちなみに、コレクションルームは常設展なので残念ながらコロナ休止になっちゃいました。またどこかで会えるでしょう。

京都の美術館はどこも秋本番で、力が入った企画展がずらり。今回の緊急宣言、企画展は全て開館。そりゃそーやろね。関係者にしてみたら、オリンピックやってるのに、美術館休館ってありえへん、ってなもんで。昨今の判断基準は、何がえぇか悪いか、何が正しぃて何が間違ってるか、やなくて、〇〇よりマシ、〇〇がOKならえぇんちゃぁうん、とか。で、100%断言できるんは、自己責任がもれなく付いてきて、最後は自分に降りかかってくる、ってことかしら。戦うべき敵はコロナなのか人間なのかは、わからんけど、まるで戦国武将のように緊張を強いられる日々。家から一歩出たら戦いの場。殿、お覚悟を!